2008年8月18日月曜日

Look backから、Look aroundのふりかえりへ

北海道に来て4年半を迎えようとしています。

北海道に来て学んでいることは一生の財産になる確信をもち、
滋賀で積み上げてきたことも北海道で支えになっています。


その中のひとつ、北海道で出会って良かった言葉に「reflective practice」があります。
省察する実践家と訳されています。


ふりかえりながら成長する家庭医、は
今までも、今でも、そしてこれからもテーマになると思っています。



最近、医学教育のレクチャーを毎月担当して、
友人の指摘で自分のふりかえりに新たな気づきが生まれました。


それは、僕のふりかえりは、振り向く程度だったかもしれないということ。

ぱっと後ろを、ふと足元を、何気なく上を
見るように
自分の言動や思考をふりかえっていました。

見るべきポイントや、自分の課題のコアを、
振り向いて見つけていたとは思いますが、
きっと今まで不十分だったと思いました。


と、いうのも、
ふりかえりで、振り向くくらいなら、
その周辺を見渡すくらいのふりかえりがあってもいいのでは?
ということです。


振り向くだけのふりかえりでなく、
見渡すようなふりかえり


きっと時間がかかりますが、
新しく見つめるもの、
初めて見つけるもの、
に多く出会えそうです

そう出来るようになると、もう少し省察・反省レベルから、
あたらな概念や実験が生まれる土壌が出来るかもしれません。


今後、臨床家のみならず教育者、研究者として生きるために、
この大きくな見渡すようなふりかえりは必須です


ちょっと時間をかけて、角度を変えて、
見渡してみたいと思いました。

2008年8月17日日曜日

ジェネラリストのこれからを考えた二日間から

もう一ヶ月以上も前の話ですが、
十勝の芽室町で開催された第2回GPRPに参加しました

GPEPとは「ジェネラリストのこれからを考える会」の略とのことですが、
実際は、
『1984年に米国医科大学協会(AAMC)によってまとめられ、その後の世界の医学教育に大きな影響を与えたと言われているGPEP(Report of the Project Panel on the General Professional Education of the Physician and College Preparation for Medicine)レポート』にちなんでいるとのことでした。
参考URL:http://gpep.umin.jp/

アメリカでの医学教育に画期的な変化を起こしたGPEP。
日本では今後の総合診療・家庭医療の変化の起点になるのでしょうか?


前回は佐久総合病院、今回は町立芽室病院という地域医療の最前線を開催地にしながら、
講師陣やスタッフは日本の総合診療、家庭医療の第一線の指導医達という絶妙な組み合わせがなんだかいいな~と感じながら、ジャガイモの花咲く十勝平野をウキウキしながら進みました。


一回目は自分の殻から出られなかったのと、対象が異なる印象を受けたので、(あと遠いのと)
出席しませんでしたが、今回は非常に興味を持って参加できました。


というのも、現在研修中の病院には、規模が大きく数少ない成功している総合診療病棟があって、
そこでの日々が今の自分に大きな影響を与えたと思います。

現在、家庭医として病棟で働く日々というのが大変貴重な経験になっています。

家庭医として病棟研修しながら、いつの間にか殻をすでに破っていたのかもしれません。
病棟の同期や指導医との日々でジェネラリストという言葉に、今までより馴染んだ状態で参加できました。


一番感じたことは、「家庭医療と総合診療のベクトルとフィールド」です。
2日間を通して、そして総合診療部での日々を通して、
「ベクトルは同じで、フィールドが違う」という感覚が強化されました。

ベクトルとは、生物心理社会モデルの広がりや、患者中心の医療の方法の実践を、
意識的か無意識的かは別に、大切にするベクトルのことです。

フィールドは名前の通り、診療所(僻地、都市部)か病院(市中、大学 大病院、中小病院)である相違があるということです。

ベクトルが一致しているので、医師としてのあり方や機能、患者さんに与えるoutcomeは似ていると感じました。そのベクトルが多彩なフィールドで展開されていることが実感できました。


さて、初日の講演は芽室病院の宮本先生と、札幌医大の山本先生でした。
宮本先生は、地域医療に真摯に取り組んできた経歴の紹介のあと、
住民ニーズを大切にしながら芽室で取り組んでいる地域医療のお話が聞けました。
「人間いたるところに青山あり、墳墓の地にならんや」というフレーズが心に残りました。
経験が積まれ、思いが込められた言葉でした。

山本先生は炎のレクチャーでした。
今までは物静かな先生なのかなと感じていたので、炎のような山本先生を見て最初は驚きましたが、
聞いているうちにモチベーションとなっている山本先生自身の原体験と、
紹介された理論やフレーズから今日までの数々の学びや思いが、一気に爆発しているレクチャーになっていると感じました。
炎が「引退宣言」との取れるような発言もあり、
一世代目のリーダーから、GPEPの次世代のリーダに向けてのエールのようにも聞こえました。
含有が多く、すこし切ない講演でした。


ワークショップでは臨床推論、プレゼンテーションについて深く学べました。
東大の大西先生のプレゼンテーションの成長モデルが非常に面白かったです。

プレゼンテーションの向上を5段階に分け、段階ごとに指導医からのfeedbackが発達を促すように作られていて質の高いモデルになっていました。

しかも、そのWS中種々の質問が出ても必ず「それは・・・です」「そこが難しくて・・・」と、
モデル作成の過程の10年間の背景やそれでも残る疑問を教えてくださる姿勢に研究の蓄積を感じました。

暗黙知を形式知に変えることの難しさと大切さ、そしてそれには時間がかかること
そんなことを感じるWSでした


飲み会では、ジェネラリストは内科が何よりも大切という語りを聞いて、
総合診療医のコアは内科!!というコアがあるのかな?とぼんやり感じながら、家庭医として内科を突き詰める姿勢と、家庭医の機能全体の中の内科の大きさやバランスについてひたすら考え込みました。


遺伝型はジェネラリストでも、地域や働く場所によって表現型が内科医や家庭医になっているので、そのフィールドに求められる力をそこでつけることが一番だと思いましたが、課題にしている内容だったので染みました。


圧巻は「プライマリケアの現場における指導医のアプローチ」でした
とあるCaseのプレゼンを聞いて、GPEPの指導医からのコメントがあったのですが、
・reflectionも患者のケアになる
・患者の代理人になる意識と、そのテーマを発信する
・継続性のためのきっかけ作り
・辛い決断のときのリーダーシップ
などなど、教科書に無いけど、ジェネラリストにとっても大切なことの宝庫でした。


今までセミナーや学会など家庭医療の世界にどっぷりでしたが、
新たな出会い(人も考えも価値観も)がたくさんあって、かつその出会いが心地のよいもので、
参加してよかったと思いました。


最後に、一番染みて心に残った内容。
「不確実性に耐える力、の前に不確実なものかの本質を見極める力が大切」

臨床の場の問題を安易に不確実性に押し込める前に、
それが本当に不確実かを見極める研鑽が必要なんだと痛感しました。

道は遠いですが、一歩一歩の毎日にしたいです。