2012年7月19日木曜日

ストーリーテラーとファシリテーターの両立って難しい

 昨日は滋賀医大での二回目の講義でした。
ポリクリ班も変わって、気持ち新たな時間。
今回は私がメイン講師でした。

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A9:00-9:30イントロ、講師の自己紹介
 9:30-9:45グループメンバーの自己紹介、家庭医のイメージ
B9:45-Caseひとつめ提示
 ダイアログ&問い→ディスカッション
10:20-10:30休憩
C10:30-Caseふたつめ
 ダイアログ&問い→ディスカッション 
D11:30-12:00まとめ
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という前回とほぼ同じ流れでした。


 Aでは自己紹介を兼ねてのキャリアとライフサイクルを述べ、その後、参加学生の10年後に希望するキャリアとライフサイクルも紹介してもらい雰囲気作り、場づくりに役立ててみました。
 前回とは違った雰囲気でしたが、お題の良さを今回も感じることができました。将来の話って良いですね。ポリクリ班でも互いの知らない側面が出るようでチーム内の関係性も深まっていく手ごたえがありました。

 Aで学生さん達からでた家庭医のイメージは
まちのお医者さん、知識が沢山ある、Drコトー、診断学の講義難しかった、Drコトー、往診など外に出向かう医師
でした。Drコトーって今の医学生の”家庭医イメージ”の定番なんですね~。

 Bでは小児の救急→慢性疾患を、Cでは神経疾患の終末期と看取りを扱いました。
いずれも診断学的な面から入りつつ、Contextual Care、その後の治療計画、経過そのものを一緒に考えるディスカッションを行いました。
 Bでは全人的なケアを、Cでは臨床倫理に関する問いを場に出し、Caseを別の側面から捉えてもらえるようにファシリテーションしました。

 Caseの最後の振り返りでは、学生さんたちなりに『医師が人の人生に関わる方針を決定することの重み』について議論しました。今回も医師の葛藤や苦悩、不安な気持ちなどを表現し、学生さん達も一緒になってその事例を共に乗り越えるような時間になりました。
 ストーリーテリングだけでリアリティショックまで経験できてもらえたようで(その解説もできて)よかったです。

 Dでは、定番の”家庭医に必要な能力とは?なぜ必要か?”を学生さん達から発表
・知識(患者さんの医学的な疾患管理のみならず各疾患のQOL・生活指導を行う知識)と診断能力
・それを伝えるためのコミュニケーション力
 (チーム医療・感zyさんとの生活指導を行う時に必要だから)
・診断をつけるだけでなく、その診断をつけてからの治療計画を、その患者の周囲や環境等、様々な内外要因を踏まえて決定する能力
 (患者さん自身はもちろん患者家族や職場環境まで包括して考えることが大切だから)
・広い医学知識とその場その場で直面する問題に対して対処・解決する能力
 (大きな病院で働く医師よりも、一人や少人数での決断が求められる場面が多いと感じたから)
・患者の生活環境を良く知って、治療の方針を決めていく能力
 (家庭医は患者の生活と近いため)
・患者さんの背景にあるもの、例えば家族との関係、生活状況を把握できる能力
・保健師さん介護士さん等病医院以外のスタッフのと良い関係を作れる力
 (地域で連携して、生活指導やケアを行わないといけないから)

 幅広い医学的知識と診断能力、Contextual Care、特有の問題解決に焦点が当たった感じですね。
もう少し感じてもらえたらという点もあったのですが、それは力量不足でした。

前回学んだ教授法
 ・患者さんとその疾患との出会いとその後までを紹介し、最後にその経過を振り返る
 ・患者さんとその疾患についての十分な背景情報と医学的知識を与えて議論する
 ・議論の途中に、実際の患者さんや家族からの質問、医師の自問自答を混ぜる
 ・医師自身の気づきや悩みや思いを同時にプレゼンする
を実践してみましたが、実はこれって難しかったです。

 ほとんどアドリブで臨んだ反省もあるのですが、ストーリーテラーとファシリテーターのバランスがイマイチで、特に自分の患者さんについて語ると当時の思いがあふれてしまいストーリーテーラーの側面が際立ってしまいました。


ディスカッションポイントやメタテーマを想定して、ちゃんとファシリテーターにもならないと・・・と反省。

 家庭医自身の関わりとその内省のプレゼン(つまりポートフォリオ)は強烈な教育資源になることを再確認できましたが、その強さ故に客観的なファシリテーターの側面を阻害しない様に教えられるように次回は臨みたいと思います。