2010年9月5日日曜日

100年前の報告書が今も影響していることの学び

フレックスナー報告という名前は聞いたことがありました
明日の人間と医学の勉強会の準備で、いろいろ調べてみるとはまってしまいました。
明日は30分しか持ち時間がないので、ここに書き残したいと思います。

【フレックスナー報告とは】
1910年に出された報告書で、全米とカナダの医学校の外部評価を行い、
現在の医学教育の基盤(理系学生の入学、基礎医学と臨床医学の体系、基礎医学では実験室の導入、臨床医学では病院を教育の場に設定)を確立した報告書

当時44歳、二年間で全米・カナダの150もの医学校(300といううわさも)を訪問し、ABCの三段階で評価を行いました。報告書は360ページもの枚数で驚きました(ネットで手に入ったのも驚き・・・)

【フレックスナーとは】
調べてみると、フレックスナーは中学校(しかも自分で設立した)の先生で、当時野口英世が研究していたロックフェラー研究所のフレックスナー所長の弟さんにあたります

当時はドイツの高等教育の研究をしており、医学教育を立て直したいと思っていたアメリカ医師会の委託を受け、発足したカーネギー財団がフレックスナーに白羽の矢を立てたのでした

【当時の医学教育】
そのころの医学は、今主流の薬物治療もあれば、整体療法もあり、中には自然治癒療法もありました。
またその教育は、ジョンズホプキンスやシカゴ大学のような病院中心の教育もあれば、小さなクリニックや寺子屋みたいなところでの徒弟制の教育もあったそうです
フレックスナーは病院中心でかつ科学的な医学教育を推し進め、当時の医学校が半分になったということです
(まさに事業仕分けで、AはOK、Bは一年の猶予を与え再評価、Cはお取りつぶしだったそうです。)

【ちょっとした裏話??】
うがった見方をすれば、カーネギー財団はロックフェラーからの資金を受けており、関連するロックフェラー研究所とそこから設立された製薬業界の発展に貢献したともみることができます
ただ、フレックスナー自身は誠実にプロジェクトに取り組んでおり、医師が社会情勢によってその役割を変えることの重要性などについても報告書で言及しています

【今日に至る報告書の影響】
このフレックスナーモデルは、僕が受けた医学教育そのものです
もちろんまだ100年しか経っていないので変わらない部分もありますが、医学(そしてそれを取り巻く社会情勢)は大きな変化をしています。
逆に100年も不動のモデルとして今も医学教育に大きな影響力を維持していることにハッとさせられました。

このフレックスナーモデルでは科学者としての医師・専門医が要請され、論理的・科学的な信頼を高め・学問としての発展に貢献しました

ただ、一方で文系的な側面・アートとしての医療に関して医学教育で学ぶ機会が極めて少ないことが弊害になっています(そのあたりが不安・不満でした)
現にフレックスナーは「ケアの断片化」と「医師患者関係の劣化」を引き起こしたと後悔のコメントを残しているそうです

ただ、これだけの影響力を残している報告書ってすごいな~と純粋にフレックスナーのことを尊敬できたのが何より勉強になりました

明日の勉強会でのディスカッションが楽しみです


*間違いや勘違いがあればご指摘をお願いします。