2010年2月20日土曜日

生涯学習における”旅”の有用性

 旅が学びのきっかけになる…

 昨日HCFMのレジデント向け勉強会が開催されました。
勉強会では指導医のH先生から、生涯学習におけるCritical Self-knowledgeの大切さと、
それを引き起こす様々なものを紹介してくださいました。
 
 その中に“旅”があることを知りました。


 出典はMcWhinneyのA Textbook of Family Medicineの23章[2版p425の下あたり]です。
HCFMのレジデンシーでは各診療所ローテーションと病棟研修、選択研修という仕組みそのもののように感じました。


 『そんなに遠くでなくてもよい』と本には書いてありますが、確かに北海道内といっても多種多様です。
3年間で、道内5ヶ所の診療所と2ヶ所の病院で働き、離島、農村、郊外、郊外、地方都市、大都市と様々な地域で生活しました。規模も診療所なら有床、無床、病院も大病院、中小病院と様々でした。


 “旅”としては長期滞在ですが、その土地を知り、馴染む“旅”になっていたと振り返って思いました。“旅”先では、出会う人も、文化も少しずつ異なります。

 漁村では狩猟民族性?農村では農耕民族性?という地域性の違いからの病気への向き合い方の違いを感じたり、紹介一つにしても判断基準が違ったり・・・
 何より現場が変わることで、提供する医療の範囲、使える地域資源の種類、地域に根ざしている大きなContextが変わる経験をすることができました。

 地域が変われば、家庭医療も少し変わる。
少しというのは、変わらないものもあるからです。

 家庭医の基盤となる見方やアプローチのコアはどこでも同じでした。
医師患者関係の構築も、地域の背景を知り医療資源を駆使することも、差異はわずかにあれどほぼ一緒だったように思います。また、その土地の歴史や文化を学ぶことで、その土地の人とラポールが深まる経験も積むことができました。
 そんな診療を繰り返すことで、土地に生き住む人たちへの敬意が沸いてきます。家庭医としての大切な姿勢が醸成されるような感覚になりました。


 かつてミシガン大学のマイク先生から、家庭医にとって“pluripotency(=分化万能性)”が大切と教えてもらいましたが、まさにその“pluripotency”を学べるようなレジデンシーのような気がしました。

 何が変わるもので、何が変わらないものなのか・・・。
まだまだ未熟ですが、長く働く地域と出会って根差した時、その地域に必要とされる家庭医に分化できる力をためているような気がします。


 また選択研修も最高の“旅”の機会になっています。
十勝、滋賀、岐阜で10年以上同じ地域で働いている先輩医師との出会いとインタビュー、レジデンシー東京のレジデントデイでの学びの共同体の見学など、自分に無いものを、自分が必要だったけど手に入らなかったものにチラッと出会える機会になっています。

 まさにCritical Self-awarenessを多く経験できる機会になっています。

 極端なことをいうと、外部との対話、外部からのメッセージは全て“旅”の要素がありそうです。
家族や友人との何気ない会話、読書、映画、すべて“旅”なのかもしれません。
最近『拡張による学習』にはまっています。これも確かに“旅”ですね・・・。
 

 これからも“旅”を大切にしながら家庭医療の学びを深めたいと思います。